robocup-zunda’s blog

高崎高校物理部の部活です。

研究発表の世界大会(ISEF2023)にロボ部門で出場した感想

こんにちは。ふわKです。

先日、高校生の研究発表の世界大会である、「国際学生科学技術フェア(ISEF2023)」にRobotics and Intelligent Machines部門で出場してみて、世界のロボット研究のレベルの高さに驚かされました。

今回は、その感想を書かせていただきます。

ISEFとは?

ISEFの知名度は結構低いと思うので、先にその説明だけ簡単にさせていただきます。

世界約70の国と地域から1500人以上の学生が参加する世界最大の科学コンテストであり、「科学のオリンピック」とも呼ばれる。

国際学生科学技術フェア - Wikipedia

ということで、世界で一番大きい高校生用の研究発表会です。数学オリンピックとかロボコンとかそういうものの研究発表版です。

部門が大量にあり、ロボットやアプリ、数学や物理や生物学、社会科学までほぼ全分野を網羅しています。賞に関しても7.5万ドル(日本円で1000万円)の賞金がでるものもあったりと、かなり豪華です。合計賞金は6億円近いとか...

いろんな企業や団体・大学がスポンサーになったりブース出展したりしていて、MicrosoftやCIA、MITなどの名前もありました。

出場者はその国や州で予選を勝ち抜いた人たちで、日本では「JSEC(高校生・高校生科学技術チャレンジ)」と「日本学生科学賞」で上位入賞した人が代表として選ばれます。

 

自分の発表した研究

僕が発表したのは、「AIを搭載した白杖を作る」という研究です。(個人研究)

自分で撮った白杖視点のデータ約9000枚を学習しており、駅ホーム内の線路や、目の前の横断歩道といった危険状況を検知、音声通知することができるというものです。従来研究では白杖視点という条件において、これらのモノの検知を達成できていませんでした。(AIのデータセットは基本車目線or人目線で集められたもので、白杖視点ではないため)

また、YOLOを使った歩行者や自転車やクルマの検知機能や、9軸センサーと組み合わせた横断歩道横断中のナビゲート機能(右に外れそうになったら左に戻るよう通知したり、横断が終了すれば渡り切ると通知したりなど)も実装しています。

ハードウエアは3DCADで設計して3Dプリンターで印刷しており、市販の白杖にドッキングできるようなデバイスとしています。

jr.mitou.org

ISEF出場の流れ

先述の通り、ISEFに出場するには「JSEC(高校生・高専生科学技術チャレンジ)」か「日本学生科学賞」で上位入賞する必要があります。僕は、読売新聞さん主催の「日本学生科学賞」で内閣総理大臣賞(最高賞)を取って、ISEFの日本代表に選んでいただきました。

そのあとISEF本番まで放置というわけではなく、読売新聞さんが研究や発表のブラッシュアップにご協力くださるメンターの先生を付けてくれますし、研修も何度か開いてくれます。

そのメンターが本当にすごい人で、その分野の第一人者という人を付けてくれます。僕の場合はロボット工学の有名な教授で、「ロボカップ」というロボットの世界大会(ジュニアの方にうちの部活も出ています)を創設した方がメンターになってくださりました。

サポートはかなり手厚く、かなり頻繁にオンラインミーティングなどを開いて、資料や質疑応答まで細かく見ていただけました。本当に高名な教授の方が一人の高校生にここまでやってくださるのはめちゃくちゃ有難かったです。

 

ISEF本番と感想

今回のISEFはアメリカのテキサス州ダラスで開催されました。70か国近くから1000人以上のファイナリストが出場していて、日程が5日ほどありましたがかなり盛り上がっていたと思います。

やはり、イベントの盛り上がり方がかなり印象的でした。日本だとけっこう、研究発表会というと固いイメージですが、向こうは本当にイベントって感じでした。DJがいたり、偉い人(ノーベル賞受賞者など)の話に普通に掛け声的なものを言ったり...。陽気で楽し気なイメージが常にあったと思います。

 

審査日はISEFのオープニングセレモニーから3日目で、8:30~16:15までみっちりでした。何人かのジャッジ(審査員)が来て、ポスターの前で説明したり、質疑応答をしたりといった感じです。審査時間がジャッジ1人当たり15分間しかないので、すらすらと説明できない英語弱者としてはかなり大変でした。そこらへんはどれだけ事前に質問を想定して応答を作っているかというのが問われると思います。

ロボット部門で問われることはやはり、「この研究・開発物の新しいところは何処か」「どこが自分で独自開発したもので、どこはソースコードを参考にしたものなのか」といったところです。僕はポスターや資料でハードウエアをどこまで自作したのかを上手く伝えられていなかったので、かなり突っ込まれました。(筐体は自作、マイコンやコンピュータは自作じゃない、など)

 

他国の代表の発表を見ていて思ったのは、「英語ペラペラの人多いなぁ~」ということです。もちろん発音の癖とかが独特でネイティブではないなとなる人も多いですが、でもしっかりと英語を聞き取ってすらすら話す能力は総じてめちゃくちゃ高いです。特に専門用語も飛び交う中での聞き取りはかなり難しいので、それができる人たちは英語での発表を何度も経験済みなんだと思います。

また、ロボット部門としての研究の多さにも驚きました。ロボ・知能機械分野だけで100近い研究がありました。「マテリアル工学」「環境工学」「埋め込みシステム」「ソフトウエア」といった工学系の別分野も存在し、そちらと分化しているにもかかわらず、です。

日本ではロボットの研究(サッカーロボとかではなく研究としてのデバイス開発)をしている高校生はたいへん少ないので、かなりの衝撃を受けました。

レベルとしても非常に高く、日本ではユーザーテストまで行っているだけでも学生としてはかなり上澄みの研究ですが、世界ではそこまで行ってアタリマエ、という感じ。

わかってはいたことですが、世界の高校生の工学研究のレベルはめちゃくちゃ高い、というのが今回出場した正直な感想です。(その国の最上位の研究しか参加できないのでレベルが高いのは当たり前ですが)

 

結果と振り返り

結果としては、今回のISEFで受賞することはできませんでした。世界のロボット研究・発表のレベルの高さを思い知らされる結果となりました。

もちろん僕は、研究のレベルや面白さでほかの研究に劣っていたと考えているわけではないのですが、それを上手く伝えることができなかった、またその面白さに強い説得力を持たせるためにはまだ研究の進みが足りていなかったと感じています。

発表と質疑応答に関しては、ハードウエアやシステムにおいて自分で作ったところと、ソースコードなどを参考にしたところをちゃんと明記するような追加の資料を作っておくべきだったかもしれません。質問されたとき「これは自分で作った、これらはここに書いてあるものを参考にした」とササっと言えれば、この研究の本当に新しいところやこれからの発展といった話をもっと踏み込んでできたような気がします。

研究自体については、もっと研究を進めないとISEFの最上位の賞の受賞は難しいなと思いました。「視覚障害者の方のモビリティ向上」の為にデバイスを作りました、という所で研究が終わってしまうと、世界で勝つのは難しいのかもしれません。僕としてはこの研究はそれで終わるモノとは思っておらず、「地域全体の危険の早期発見・迅速なインフラ整備」であったり「ユーザーの歩行によるフィードバックからその地域の危険に関するデータセットを作成、白杖バイス以外にも活かしていく」というようなビジョンを描いています。

(実際にそういうビジネスプランを発表して、大学教授や起業家の参加するビジコンで最優秀賞を取ったこともあります。)

時間的な制約が厳しいですが、その中でこれらのビジョンを英語で伝えきることができたら、もしくはこれが将来のビジョンではなく、本当に実装する手前になるほどにまで研究をすすめられたなら、賞も狙えたと考えています。

もちろん全然簡単なことではないので、正直、日本の高校生でそれができたら凄すぎると思います。それまでに世界のロボット研究のレベルは高く、そこまでしないと勝てないほどの高い舞台なんだなと痛感しました。

日本では高校生のロボット研究に対する支援は、機材や資金, 技術といったあらゆる面で世界と比べればまだ足りていないと感じていますが、その中でも色んな方からの支援をいただいて、ここまで研究を進めさせていただいたのはとても感謝していますし、良い経験になりました。

もしロボットや工学の研究をしてみたいと思っている中高生がいたら、絶対にやってみた方が良いとオススメ出来ます。(開発の援助が必要なら、自分も参加した「未踏ジュニア」というものに応募するのがおすすめです。)

 

まとめ

今回のISEFでは受賞はなりませんでしたが、世界にはロボット研究をしている高校生がこんなにもいると知れて嬉しかったですし、レベルの高さを知れたことは良い励みになり、これからも研究を続けていこうというモチベーションに繋がりました。

これからも研究を続けていくので、何らかの形で皆さんに進捗を伝えられることを願っています!!